airaingood’s diary

このブログは、裏勝手に、自由に、裏の話(倫也さんの体調管理も含む)

中村倫也 記事「人数の町」

中村倫也、“考える男”が貫く美学「世間とズレないように」
近年、映画やドラマの出演作が途切れることがない俳優・中村倫也。2020年も、6月に公開された『水曜日が消えた』に続き、主演を務める映画『人数の町』(9月4日公開)が封切られた。俳優として“絶好調”と思わせる活躍だが「世間とズレないこと」を最も大切にしているという――。

■世間一般の人々と自分の感覚のズレが生じてはいけない

『人数の町』は、数々の人気CMやミュージックビデオを手掛けてきた荒木伸二監督が手掛けた初長編映画。周囲に流されて生きているうちに借金で首が回らなくなってしまった男・蒼山(中村)が、ある男に用意された町の住人になるが、そこは“自由と平等”が確保されているが、自ら何かを考えて行動することが皆無の場所だった……。

台本を読んだ中村は、作品の持つ独創的な世界観に興味を持ったというが、同時に「これを観た人がどんな感想を抱くのか興味があった」という。そこには、世間一般の人々と自分の感覚のズレが生じてはいけないという中村の思いがあった。



「こういう仕事をしていると、どうしても気を使ってもらえる立場だったり、神輿に担ぎ上げてもらったりすることが多い。もちろんその上にいることを意識しなければ、仕事にならない場合もあるのですが、あまりに調子に乗ると糸の切れた凧になってしまい、恥ずかしい人間になっちゃうと思うんです。作品を観てもらう人と作っている人間の感覚がズレてしまうと、コアになる部分がつかめない。それって怖いですよね」。

特にここ2,3年は「環境が大きく変わったことを実感している」というと「異性として僕を見てもらえるような記事や、イベントとかでもキャーって言ってもらえたり……。仕事としてその感覚を受け入れようという部分もありますが、僕にとってそれが普通になると居心地が悪いというか、もう普通じゃないんです。いつまでも変わらないでいたいという美学はあります」と苦笑いを浮かべる。

【写真】もっとみる(全23枚)

■若いころから、人よりしっかり考えないといけないという癖がついている

本作で“人数の町”に住む人々は、ある意味で考えることを放棄している。しかし中村は、主観的でありつつ、しっかりと客観的な目を持ち“考えること”を大切にしている。「若いころは仕事がなく、かなり暇でした。レッスンとかもありましたが、いつでもできることは考えることぐらい。仕事がない=才能がないと思っていたので、人よりしっかり考えないといけないという癖がついていました」。

考え過ぎてがんじがらめになってしまい「もっと流された方が楽だよな」と思うこともあるというが、一方で「考えないと個が持てない。アウトプットするとき、社会性や協調性を持てば、それはすごく大切な個性になる。その意味でも考えることはとても大事だと思う」と信念に揺らぎはない。

俳優としては、しっかり役柄について自分なりに考えて作品に臨むというが、現場に入った瞬間、自分の考えは一回捨てる。「そこには自分だけではなく監督もいるし、共演者もいる。そのなかで自分の嗅覚と経験、感覚などを総動員して、いろいろなことをチョイスしていかなければいけない。経験を重ねるごとに悩む機会は増えました」。

【写真】もっとみる(全23枚)

■現場では基本的に演技の話をしない

しっかり考える中村が、流されやすく“考えない”蒼山を演じる。「当然、自分のなかでもさぼりたい気持ちや、楽をしたいという部分はあります。そういうところをフックにして蒼山を理解していこうと思っていました」と語る。非常にいろいろなテーマが内在している作品だけに、共演者とのディスカッションも頻繁に行ったのでは……と思われたが「基本的に現場では演技の話はしないんです」という回答が。

「“百聞は一見にしかず”という言葉がありますが、前もって話したことより、現場に入ったときの感覚や共演者の呼吸で感じることの方が多いと思うんです。もちろん核になる部分はしっかり見極めますが、あとは現場でというやり方。現場では雑談してコミュニケーションをとる方が圧倒的に多いです」。

【写真】もっとみる(全23枚)

■俳優業はとても豊かな仕事

俳優業に対して「想像力を持って作り、想像力を持って観るのは人間しかできないこと。その意味で、とても豊かな仕事だと思っています」と笑顔を見せる。

今回の現場も、中村にとっては非常にそそられるものがあった。「ものすごくアナログで低予算な感じが随所にみられましたが、そういうのにキュンキュンしちゃうんですよね。制約があるなか、スタッフさんたちが一生懸命頑張っている姿を見ると、自分も頑張ろうって思える。すごくテンションが上がりますよね」。

「モノ作りが大好き」という中村。仲間と力を合わせて作り上げた作品に対して、受け取り方も自由であることも、魅力の一つだ。中村自身への評価も「コントロールできるものでもないし、好き勝手思ってもらってかまわない」とあっけらかん。

どんなに人気俳優になっても、変わらずブレない中村。彼にとっての“自由とは”という問いには「夕方ぐらいに家に帰って、夕日を見ながらサケを飲むこと……幸せですね」と満面の笑み。そんなところも昔から変わっていない。

【写真】もっとみる(全23枚)

取材・文:磯部正和

撮影:友野雄(Yu Tomono)

『人数の町』

9月4日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

出演:中村倫也 石橋静河 立花恵理 橋野純平 植村宏司 菅野莉央 松浦祐也 草野イニ 川村紗也 柳英里紗山中聡

脚本・監督:荒木伸二

配給:キノフィルムズ